摩擦力fの向きはどっちでもいい。テキトーに置いてしまうこと。

結論から言うと、

摩擦力fの向きは、接触面の水平方向のどちらでも構いません。

 

もし実際は逆向きだったら、計算の結果がマイナスで出るだけですからね。

計算の結果で方向がわかるので、適当に置いちゃってください。

ルールその4.

摩擦力fの方向は、”接触面の水平方向”ならどっちに書いてもよし。

→計算の結果で「正しい」方向がわかるから。プラスなら同方向、マイナスなら逆方向。

たとえば、

質量mの物体Aを、右向きに力Fで引っ張ったとします。

 

力の作図をすると、

N:物体Aが床から受ける垂直抗力、mg:物体Aが地球中心から受ける引力(=重力)、f:物体Aが床から受ける摩擦力

を書き込みました。

 

これが、正しい「力の作図」ってやつです。

 

え、物体Aは右に動くはずだから、

摩擦力fの向きは左向きだって?

 

そんなことを

いちいち考えているから・・・

 

物理ができねー、ってことに

なってるんです。

物理学は「方向」も計算で導出する科目です。

多くの問題集では、「物体Aは右向きに動くから、摩擦力fを左向きにとった」とか書いてあるんですが、

これって直感の話なんですよね。

 

物理ですよ、「目の前の現象を数式に落とし込んで、『計算』で現象を解析する」学問ですよ。

 

なに勝手に、「感覚」で方向を決めてるんですか。

 

物理は直感も物理的センスも一切いりません。

 

ルール通りに力を書き込んで、ルール通りに公式に代入して、ルール通りに計算すれば、正しい答えが出るのが、物理という教科です。

 

物理学では、方向も計算で求めるんです。

 

当たり前でしょ?

「ええと、物体Aは右向きに動くから、摩擦力fは・・・」とか、直感で方向を決めるのはもうやめてください。

問題集の最初に載っているような基本問題ならともかく、

難しい問題になるほど通用しなくなってきます。

 

直感で摩擦力fの方向を設定して、「正解だ、よっしゃ!」とか思っているやつ、

実際の入試ではそんなカンタンな問題、出ないよ?って言いたい。

 

たとえば、この問題。

物体Aが受ける摩擦力」を「正しい方向」に記入できますか?

ってむりでしょ。こんなの。

 

なぜなら、

F1とF2の大きさ次第で、摩擦力の方向が変わるからです。

 

でもね・・・摩擦力に向きなんて、テキトーに設定してあげればいい。

(物体Aが物体Bから受ける摩擦力:fA、物体Aが物体Bから受ける垂直抗力:NA、物体Aが地球中心から受ける引力[=重力]:mAg を記入しました。)

物体Aが受ける力は、こう記入できますね。

 

そして、物体Bが受ける力も記入してあげると、

(物体Bが物体Aから受ける摩擦力:fB、物体Bが物体Aから受ける垂直抗力:NB、物体Bが地球中心から受ける引力[=重力]:mBg、物体Bが床から受ける垂直抗力:Nを記入しました。)

 

これで、力の作図は完成ですね。

ここから、運動方程式を立てていきます。

ルールその1.

自分でX軸とY軸を設定する。

今回は、

・右方向をX軸の正方向

・鉛直上向きをY軸の正方向

に設定してみました。

あとは、運動方程式の公式(ma=F)に代入して、式を立てるだけです。

【運動方程式】ma=F

→[質量(kg)]×[加速度(m/s²)]=[正方向にはたらく力の総和(N)]ー[負の方向にはたらく力(N)]

にそれぞれ代入するだけ。

あ、ここからはただ、「F1とF2の大きさ次第で摩擦力の方向が変わる」ことを証明するだけなので、スルーでOKです。

ふぅ・・・

こんなかんじですね。

 

あとは、作用反作用の法則も忘れてはいけません。

物体Aと物体B間の垂直抗力と摩擦力の「大きさ」は一致します。

(垂直抗力は最初から反対方向に設定してあるので、符号は同じですね。一方で、摩擦力は両方ともX軸の正方向に設定してあったので、計算上の符号は互いに逆の向きになります。

 

これらの式を連立して、解くと、

 

(以下の解答を追記: 2025/12/23)

<物体Aが物体Bの上をすべっている時>

物体Aが物体Bの上をすべっているということは、

 

【状況1】物体Bから見て、物体Aが左にすべっている($f_A$が正)

物体Bは物体Aより速い

物体Bは物体Aより大きな加速度を持つ($a_A<a_B$)

 

【状況2】物体Bから見て、物体Aが右にすべっている($f_A$が負)

物体Aは物体Bより速い

物体Aは物体Bより大きな加速度を持つ($a_A>a_B$)

 

この2通りである。

 

よって、物体Aの加速度$a_A$と物体Bの加速度$a_B$の大小関係を比較すればよい。

(ここまで来れば、もう数学の問題)

 

 

(ア)より、$a_A=(F_1+f_A)/m_A$

(ウ)より、$a_B=(F_2+f_B)/m_B$

 

(カ)より、$f_B=-f_A$だから、

$a_A=(F_1+f_A)/m_A$・・・(ア2)

$a_B=(F_2-f_A)/m_B$・・・(ウ2)

 

 

物体Aの加速度$a_A$と物体Bの加速度$a_B$の大小関係を比較するために、

その差を$P$とすると、

$P=a_A-a_B$

 

(ア2)(ウ2)を代入すると、

$P=(F_1+f_A)/m_A-(F_2-f_A)/m_B$・・・(キ)

 

 

ここで上記の【状況1】【状況2】の話から、

 

【状況1】$f_A$が正の時、$P$は負。

$f_A>0$かつ$P<0$となる条件は、

 

$f_A>0$かつ、

(キ)より、$(F_1+f_A)/m_A-(F_2-f_A)/m_B>0$

 

$f_A>0$かつ、

$f_A<(F_1/m_A-F_2/m_B)/(m_A+m_B)$

 

これが成立する条件は、

$(F_1/m_A-F_2/m_B)>0$つまり、$F_1/m_A>F_2/m_B$

 

 

【状況2】$f_A$が負の時、$P$は正。

$f_A<0$かつ$P>0$となる条件は、

 

$f_A<0$かつ、

(キ)より、$(F_1+f_A)/m_A-(F_2-f_A)/m_B<0$

 

$f_A<0$かつ、

$f_A>(F_1/m_A-F_2/m_B)/(m_A+m_B)$

 

これが成立する条件は、

$(F_1/m_A-F_2/m_B)<0$つまり、$F_1/m_A<F_2/m_B$

 

 

よってまとめると、

$F_1/m_A>F_2/m_B$の時、$f_A$は正。

$F_1/m_A<F_2/m_B$の時、$f_A$は負。

 

(完了)

 

 

やはり、摩擦力fの向きは、

F1とF2の大きさによって変わることがわかりました。

 

あとは、摩擦力fの向きが計算の結果によってわかることも証明されましたね。

ルールその4.

摩擦力fの方向は、”接触面の水平方向”ならどっちに書いてもよし。

→計算の結果で「正しい」方向がわかるから。プラスなら同方向、マイナスなら逆方向。

摩擦力fの向きって?まとめ

摩擦力の向きは、計算の結果で判断すること。

なので、感覚で決めずにテキトーに置いちゃってください。

 

テキトーというのは、

一生、摩擦力を「右向き」に置いていい

ってことです。

 

よくわかんなかったら、

右向きに置きましょう。

 

計算の結果が「正」だったら右であってますし、

 

「負」だったら逆に左だった

と教えてくれます。

 

計算の結果が

ちゃんと摩擦力に向きを決めてくれますから。

 

以上です!

ここまでお読みいただきありがとうございました。