(https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?d=771&f=abm00005964.pdf&n=2025_op_39_butsuri.pdf)
どうも、白滝です。
スマホにも、どんな電化製品にも、
電子回路
が搭載されているわけですが、
そんな現代では、
電子を思い通りにコントロールしたい
という要望が大きいわけですね。
電子を止める・動かすだけでなく、
そのスピードや、方向を制御したい。
なぜなら、
そのコントロールできる幅で、
できることが大きく変わってくるからです。
で、この問題は・・・
電場と磁場で、電子をどうコントロールすべきか。
その基礎・基本を問う問題ですね。
電場って、電子にどう影響する?
磁場って、電子にどう影響する?
一見簡単なようで、
ちゃんとイメージできないと解けない問題となっています。
問題文から推測するに、
今回の磁場と電場は、このようになってますね。
(図に書き込みました)

磁場$B$は、
紙面垂直に、こちら側に向かう方向。
電場$E$は、下から上の方向。
じゃあ、この電場と磁場は、電子にどう影響を与えるか?
ですね。
まず、真っ直ぐに飛んだ場合($v_1$)は、
進行方向にかかる力はありません。
ね?
磁場と電場による力がつり合っているので、
まっすぐ飛ぶのですが、
磁場も電場も、進行方向に力をかけていない。
だから、
初速(v_0)のままですね。
次に、電場のみの場合。($v_2$)
電場は、そこにある電子に、
$-eE$(電子の電荷量: $-e$)
の力をかけます。
(マイナスなので、電場の向きとは逆向きに、大きさ「$eE$」の力をかけるってことですね)
これを、電場の向きを正として、
運動方程式に代入すると、
$ma=F$(運動方程式)
$m_e a = -eE$
よって、$a = -eE/m_e$
(電子の電荷量: $-e$、電子の質量: $m_e$)
したがって電子には、電場により常に、
電場と逆向きに一定の加速度「$eE/m_e$」が発生している
ことになりますね。
領域$R$中の電子の速度を、図に書くとこうなります。

(下向きの加速度「$a=eE/m_e$」が領域$R$の滞在時間「$t$」だけかかり、下向きの速度$v$が生じている。)
よって、
$v_2$は、初速「$v_0$」と下向きの速度「$v (=at)$」を合成したものとなり、
初速「$v_0$」より大きくなる。
ここまでで、
「$v_0=v_1<v_2$」とわかります。
最後に、磁場のみの場合。($v_3$)
大丈夫ですか。
見落としてはいませんか。
磁場による力は、
電子の移動する向き(電流の向き)によって変化します。
いいです?
それも、フレミングの左手の法則を使えば分かる通り、
磁場による力の向きは、電子の移動する向きに対して垂直です。
え・・・
そうなんです。
磁場は、電子の移動する方向に、一切の加速をさせないんですわ。
(だから、$v_3=v_0$。初速と変わらない。)
え?
わからないって?
では、詳しくお話ししていきましょう。
ざっくり言えば、
ーーーーー
領域$R$のどこでも、磁場は電子に対して、進行方向に加速しない。
(磁場による力は常に、進行方向と垂直な方向にかかっている。)
ーーーーー
というだけなのですが。
ええ。
ちゃんと考えるなら、エネルギーで見た方が、
理解しやすいかもしれませんね。
エネルギーの考え方。
その一つに、「仕事」というものがあります。
これは、
式にすれば「力×距離」なのですが、
その方向を揃える必要があるんですね。
力と距離の向きを揃える。
だから、ご存じのとおり、
垂直な方向の力と距離は、仕事にするとゼロなのです。
いいですか?
先ほども申しました通り、
フレミングの左手の法則を使ってみると、
- 電子が移動する向き
- 磁場の向き
は常に垂直なんですよね。
力と距離(速度)の向きが垂直ということは、
磁場は電子に対して、一切仕事しない(仕事はゼロ)
ってこと。
磁場が仕事しないってことは、
いくら領域$R$を通過しても、電子の持っているエネルギーは、
初速$v_0$だけ(運動エネルギー: $1/2 m_e v_0^2$だけ)
となります。
エネルギーが初速のまま。
よって、
速度は初速のまま変わらない、ってことですね。
だから、答えは「$v_0=v_1=v_3<v_2$」。
電場と磁場。
その力の掛け方をちゃんと理解しているか、問う問題なのでした。
では!
(・・・続く)





